トポロジカル超伝導~変な超伝導体の変な性質~

一言で超伝導体といっても、多くの種類の超伝導体があります。なかでも、最近になって注目を集めているのが、トポロジカル超伝導体と呼ばれる一群です。トポロジカル超伝導体は、物質内部はある意味ふつうの超伝導体ですが、物質の表面で特別なことが起きます。たとえば、一部のトポロジカル超伝導体の表面には、マヨラナ粒子や奇周波数クーパー対と呼ばれる極めて特殊な準粒子が現れるのです。

マヨラナ粒子は、もともと素粒子物理学で存在が予言されていた、粒子と反粒子の区別がつかない奇怪な粒子です。これまでの研究で、トポロジカル超伝導体に現れるマヨラナ粒子は、超伝導体接合系の電気伝導特性を劇的に変質させてしまうことが分かってきました。さらに、マヨラナ粒子の性質を応用した量子コンピュータなども提案されており、その研究は、基礎物理だけでなく応用物理の観点からも非常に重要です。

奇周波数クーパー対もまた特殊な性質を持っています。完全反磁性(磁場を物質外に完全に排除する性質)は、超伝導体のもつ最も基本的な性質です。ところが、物質表面に現れる奇周波数クーパー対は、どうやら磁場を吸い込む常磁性的な応答を示すことが分かってきました。「超伝導体は完全反磁性を示す」というどの教科書にものっている文言は、トポロジカル超伝導体には通用しないのです。

浅野グループでは、トポロジカル超伝導体のもつ奇妙な性質にいち早く注目し、これまでにも重要な研究成果を挙げてきました。我々はトポロジカル超伝導体の物理学のさらなる深化・発展を目指し、日々の研究に励んでいます。

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