超伝導を中心とした凝縮系の理論研究

私たちの研究室では、超伝導体を中心とした量子凝縮系の理論研究を行っています。

量子凝縮系では、多数の粒子が協調して振る舞うことにより、単一粒子の描像からは予見できない新しい状態が現れます。超伝導はその代表例であり、電子がクーパー対を形成することで、位相のそろった巨視的量子状態が実現します。その結果として、電気抵抗の消失完全反磁性(マイスナー効果)といった際立った物理現象が生じます。

1911年の発見以来、超伝導現象は1世紀以上にわたり多くの物理学者を魅了してきました。私たちは、量子状態のトポロジカルな性質やクーパー対の内部自由度に着目し、新奇超伝導状態の解明超伝導デバイスにおける量子現象の開拓を通じて、超伝導研究の発展に貢献することを目指しています。

最近のトピック

1. 超伝導接合系の量子輸送現象

2025年のノーベル物理学賞は、ジョセフソン効果を応用して巨視的量子現象を実証した研究者に授与されました。ジョセフソン効果とは、2つの超伝導体の間に非超伝導体を挟んだ接合系において、外部電圧を印加しなくても、超伝導体の巨視的位相差に応じた電流が流れる現象です。

このように、超伝導体を電気伝導性や磁性の異なる物質(例:金属、絶縁体、半導体、磁性体など)と接合すると、単体では現れない新たな量子現象が創発します。私たちの研究室では、場の理論に基づく解析手法と再帰的グリーン関数法による数値計算を組み合わせ、超伝導接合系における量子輸送現象を理論的に解明・設計し、将来の量子デバイス応用につながる基礎物理の構築を目指しています。

最近では、交代磁性体と呼ばれる新奇磁性体と超伝導体の接合系を理論的に解析し、クーパー対分離を利用してエンタングルした電子対を生成する新たな機構を提案しました(論文へのリンク)。

2. トポロジカル超伝導とマヨラナ準粒子

トポロジカル超伝導体は、波動関数が持つ非自明な位相幾何的構造(トポロジー)によって特徴づけられる、特殊な超伝導体です。こうした系では、境界や欠陥に局在する特別な準粒子励起が現れます。中でも、一部のトポロジカル超伝導体に現れるマヨラナ準粒子は、素粒子物理学で予言された、粒子と反粒子が同一視される非常に珍しい準粒子で、通常のボーズ粒子やフェルミ粒子とは異なる量子統計に従います。この性質を利用した頑強な量子計算(トポロジカル量子計算)の実現は、現代の凝縮系物理学における重要な研究目標の一つです。

私たちの研究室では、超伝導物理とトポロジカル物質科学の知見を融合し、トポロジカル超伝導体が示す異常な電気伝導特性の解明に取り組んでいます。本研究テーマについては、トポロジカル超伝導という概念が確立する以前より、世界に先駆けて研究に取り組み重要な成果を挙げてきました。私たちはトポロジカル超伝導の基礎学理の深化とともに、マヨラナ準粒子の将来的な実験観測への貢献を目指しています。

最近では、トポロジカル超伝導体を三つ用いた三端子ジョセフソン接合系において、量子非局所性とマヨラナ粒子性を兼ね備えた新しい準粒子励起が現れることを理論的に示しました(論文へのリンク)。

3. 奇周波数クーパー対

奇周波数クーパー対とは、クーパー対の波動関数が時間(あるいはエネルギー)に対して奇関数となる特殊なクーパー対を指します。この概念は1970年代に提案され、その特異な対称性ゆえに長年にわたり理論的関心を集めてきました。通常の超伝導体では、クーパー対は偶周波数対称性を持ち、完全反磁性(磁場を物質外へ排除する性質)を示します。一方で、奇周波数クーパー対は、これとは対照的に磁場を取り込む常磁性的応答を示すことが明らかになってきました。この事実は、奇周波数クーパー対が超伝導相の安定性(不安定性)と密接に関わっている可能性を示唆しています。

私たちの研究室では、ゴルコフ・グリーン関数に基づく理論解析を通じて、奇周波数クーパー対の発現機構とその物理的帰結の体系的理解を目指しています。特に、電子がスピン以外の自由度(軌道や副格子など)も有する多自由度超伝導体に着目し、内部自由度に由来する内因的な奇周波数クーパー対の出現と、それに伴う複雑な超伝導相図の物理的起源の解明に取り組んでいます。

最近では、強いスピン軌道相互作用を有するj=3/2超伝導体などにおいて、奇周波数クーパー対に起因した超伝導相への不連続転移が生じ得ることを理論的に明らかにしました(論文へのリンク)。

さらに詳しい情報は:
浅野泰寛のホームページ

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